4200 シリーズの変容
2002年
4200シリーズ初登場の年。いくつかの報告で、カウルの振動とトランスミッションに一定の問題があったことが伝えられている。
2003年
6MTモデル、カンビオコルサモデル共によりクイックなステアリング(52mm → 60mm)、強固なアンチロールバーへの変更が行われた。またスカイフックサスペンションのソフトウェアが更新された。またボッシュと共同開発のスタビリティコントロールMSPが搭載。スカイフックサスペンションと連動して動くことで、快適かつ安全なドライブを実現。
カンビオコルサのシフトがアップデートされ、150ミリ秒での変速が可能になった。2002年比では半分の時間と言われている。またこの時クラッチはシングルからダブルに変更。これらの変更は2002年モデルについても、ディーラー整備の際に実施されていることが多い。
スパイダーは特殊なグルーを必要箇所に施すことで20%剛性をアップ。カウルの振動が抑えられた。
2004年
グランスポーツ(イタリア読みではグランスポルト)の最初の年であり、クーペにヴィンテージパッケージという限定モデルが発表さえれた。
また6月にはクーペのフロントグリルやフロントバンパー、リアバンパーなどに改良を施されてマイナーチェンジが行われた。これ以降のモデルが一般的に「後期」と呼ばれている。リアバンパーはグランスポーツと共有。グリルは横フィンを特徴とした、クアトロポルテVとの共通性の高められたものを採用。バンパーはやや大型化され、低めのリップスポイラーが装着されたがグランスポーツより少し控えめなデザインが採用された。
また後期クーペではミッションのハードウェアが変更され、2006年以前のグランスポーツと共通になった。ソフトウェアがアップデートされ、変速速度が改善された。
小さなところではカップホルダーが採用され、リバースギアのトグルに改善が施された。またボディのフェンダー部分にV8のエンブレムが装着された。
またこの年はマセラティ創立90周年として、グランスポーツ スパイダー 90th Anniversaryが発表された。
2006年
この年、2004年に登場したグランスポーツにアップデートが加えられたと言われている。ミッションのハードウェア変更、ソフトウェアのアップデートが行われた。(要確認)
部品番号を参考にすれば、2006年以降のグランスポーツではエンジン内部も一部が変更されている。
またグランスポーツにはいくつかの限定バリエーションが登場した。
MC Victory、そしてクラシックなクローム仕上げのホイールやグリルを装備し、ボディ同色のパイピングをフルレザー内装に取り入れたコンテンポラリークラシック(日本未導入)、マセラティのエンブレムをフェンダーに装着し様々なオプションを標準で取り入れたLE(リミテッドエディション)、日本限定のCORNES 10th Anniversary。
2007年
シリーズ生産終了。
4200 シリーズ 生産台数
- スパイダー GT(6MT)574台
- クーペ GT(6MT)1078台
- スパイダー カンビオコルサ 3134台
- クーペ カンビオコルサ 5371台
- グランスポーツ 2432台
- スパイダー 90thアニバーサリー 181台
- グランスポーツ スパイダー 472台
- グランスポーツ MC ヴィクトリー 181台
総生産台数は13423台。(Maserati Forum参考)
展開色
- Acquamarina アクアマリーナ
- Arancione アランチオーネ(オレンジ、レア)
- Argento Luna アルジェント・ルナ
- Azzurro Argentina アズーロ・アルジェンティーナ
- Bianco Eldorado ビアンコ・エルドラド
- Bianco Fuji ビアンコ・フジ
- Blu Anniversario ブルーアニヴェルサリオ(90周年スパイダー専用、一部通常モデルにも採用)
- Blu Malago ブルー・マラーゴ(非常に稀、沈んだスティール系の青)
- Blu Mediterraneo ブルー・メディテラネオ
- Blu Nettuno ブルー・ネットゥーノ
- Blu Sebring ブルー・セブリング
- Blu Victory ブルー・ヴィクトリー(MC Victory専用色)
- Bordeaux Pontevecchio ボルドー・ポンテヴェッキオ
- Bronzo Montecarlo ブロンゾ・モンテカルロ(カッパーブラウンのメタリック)
- Giallo Granturismo ジャッロ・グラントゥーリズモ(黄色)
- Grigio Alfieri グリジオ・アルフィエーリ(青みがかったガンメタ)
- Grigio Granito グリジオ・グラニート(黒に近いガンメタ)
- Grigio Nuvalari グリジオ・ヌヴォラーリ(ベージュがかったガンメタ)
- Grigio Palladio グリジオ・パラーディオ(複雑なパープルがかったガンメタ)
- Grigio Touring グリジオ・ツーリング
- Nero Pastello ネロ・パステッロ(ソリッドの黒)
- Nero Carbonio ネロ・カルボニオ
- Quarzo Dolomite クアルツォ・ドロミテ(シャンパンゴールド)
- Rosso Bologna ロッソ・ボローニャ(レッドメタリック)
- Rosso Mondiale ロッソ・モンディアーレ(ソリッドの赤)
- Verde Goodwood ヴェルデ・グッドウッド(緑メタリック)
その他いくつかフェラーリ純正色でペイントされた4200シリーズ(Grigio Ingridのグランスポーツ等)、逆にマセラティ純正色で塗られたフェラーリ(Blu Mediterraneoのフェラーリ599等)などが確認されている。
カンビオコルサについての議論
4200シリーズ最大の特徴であるカンビオコルサはシングルクラッチ2ペダルMT過渡期のミッションであるため、その完成度や改善方法、運転方法等で様々な議論が行われている。
- マセラティのカンビオコルサは同時期のフェラーリに搭載されたF1マチックと基本的に同一の構造を持っている。しかしポンプの容量や制御ソフトウェア等に違いがあり、洗練度はフェラーリの方が高いと言われている。(後継のグラントゥーリズモではMCシフトと名前が改められ、フェラーリ599等と同様のミッションが採用されており、完成度が大きく向上している。)
そのためカンビオコルサとの上手な付き合い方を考えるか、6MTのクーペを探すかで大きく方向性が変わる。 - カンビオコルサの場合、通常運転時にはスポーツモードを使用することで、クラッチの消耗が抑えられるという意見が多い。また停車中にはニュートラルにすべきという意見もあるが、ある専門店はクラッチ残量と停車時のニュートラルの関連性を否定している。取り扱い説明書には、長時間停車の際にはニュートラルを使用するよう記載がある。
- またカンビオコルサは発進時、特に上り坂で最も消耗が激しい。そのため渋滞を避け、上り坂をバックして停めるような駐車場を避けることが、クラッチの温存につながる。
- カンビオコルサはソフトウェア、時にはハードウェアが年次アップデートされているため、基本的には高年式なほど性能が高いと言われている。
- 専門店が販売しているカンビオECUを装着することで、変速スピードを改善することができる。
カンビオECUはアクセル開度の調整と半クラッチ時間の設定をすることで、実質的に変速のスピードをアップしている。初期のカンビオコルサであるほどその効果を実感できる。また半クラッチの時間が減ることでクラッチの寿命を伸ばす効果がある。
カンビオECUは一長一短で、個体によってはうまく変速のタイミングが合わずに変速時にクラッチが滑ったり、シフトチェンジがスムーズにできなかったりすることがある。
カンビオECUでスロットル開度が変更されるため、アクセルレスポンスが上昇する。スポーティな乗り心地になる一方、アクセルワークがシビアになりすぎるという意見もある。 - グランスポーツの2006年以降になると、カンビオコルサがかなり洗練されている。
- 6MTを搭載したクーペGT、スパイダーGTは生産台数が少なく、非常に希少である。そのため中古車の取引相場もカンビオコルサ搭載モデルに比べかなり高い。また選べる個体自体も少ないので、好みの内外装の個体を見つけたら前向きに検討すべきである。
- クーペGT、スパイダーGTはトランスアクセルのため独特のミッションフィーリングを持っている。カンビオコルサと比較されて評価の高い6MTだが、一度試乗してから検討すべきである。
4200 シリーズ Tips
- マセラティ 4200シリーズは幾度となくアップデートされているため、好きなモデルの中で高年式を選ぶことが推奨される。とはいえ中古車として購入する個体は、ディーラー整備の段階でクラッチ等ハードウェアがアップデートされている場合がある。そのため年式=優劣とは限らない。
- スパイダーはクーペに比べて個体数が少なく、相場も安定しない。スパイダーは2シーターでクーペよりも短いホイールベースを持っているため、独特の運転フィーリングが人気である。同時に幌の擦り切れや消耗、ダンパー(生産終了部品)の故障等、スパイダー特有のトラブルもあるため、慎重に検討すべきである。
- クーペとグランスポーツでは内外装、サウンドやフィーリングに様々な違いがある。クーペの上品な外観やレザーの内装、Euro3時代の排気音(エキマニの触媒が2005年より追加され、グランスポーツは音が低くなった)に魅了されてクーペを選ぶ人も多い。